学科便り(心理福祉学科 5月)
特別支援学校の児童生徒の急増問題
2007年に従来の特殊教育が特別支援教育へと大きく変わりました。これは百年に一度と言われるほど画期的な教育改革です。改革の要点を大まかにあげれば次のようになります。
個々の児童生徒の特別な教育的ニーズ把握して、必要な支援を行うこと。
従来の「障害」に加えて、LD,AD/HD,高機能自閉症の児童生徒を教育の対象 とすること。
「盲学校」「聾学校」「養護学校」を特別支援学校の名称にして、多様な障害に対応 できるものとすること。
障害をはじめとする特別な教育的ニーズのある児童生徒の、一生涯にわたる支援を行うなうために、教育、福祉、労働、医療等の機関が連携すること。
さらに、このような改革が推進されるために、具体的なツールとして様々な条件整備があげられています。
特別支援教育は、今年4年目を迎えています。このような教育改革の背景には、学校現場における様々な教育的ニーズのある児童生徒の対応の難しさや、また国際的な動向であるインクルージョンの考え方があります。一人ひとりの教育的ニーズに合わせる教育は、長年障害児教育の領域で行われてきたものであり、それが通常の教育にも適用されるようになったことは、喜ばしいことと思います。
しかし、大きな問題が生じています。特別支援教育の推進に前後して、特別支援学校の児童生徒が急増しているという問題です。東京、神奈川の都市部だけでなく、全国的な傾向となっています。養護学校を作っても作っても追いつかないほど、入学希望者が増えていて、その対応にどの県も苦慮しています。それは小学校や中学校の特別支援学級(従来の特殊学級)に在籍する児童生徒や、通級指導教室に通う児童生徒の大幅な増加と連動しています。このことは、障害のある子どもたちが増えていることを示しているのでしょうか。環境問題と障害者の増加が研究問題にもなっています。
私は長年教育現場や教育行政に身を置いてこの問題に関わってきました。私なりの結論から言いますと、障害者が近年になって大幅な増加をしているのではなく、様々な教育的ニーズのある子どもたちが、小学校、中学校、高等学校から押し出されて特別支援学級や特別支援学校に来ているのではないかと思われます。
個々の教育的ニーズを受け止めてのきめ細かな指導が求められるようになりましたが、教育現場では「手のかかる子」「教師から見て困った子」が、通常の学級からはじき出されるようになるという結果が生じています。特別支援教育はインクルーシブ教育を根底に持っているはずですが、その正反対の方向に行っています。
私は長年、障害や不登校や非行など学校生活に適応しにくい生徒たちの教師として指導に携わってきましたが、このような現象を歓迎するものではありません。特別支援教育は学級から排除しない教育を求めるものです。高等学校を含めて、通常の教育の改革こそ、特別支援機養育の課題であると考えています。
なお、この4月に「排除する学校ー特別支援学校の児童生徒の急増が意味するもの」(明石書店)という本を出しました。ご関心のある方にお読みいただければ幸いです。
心理福祉学科 鈴木 文治
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