学科便り(社会福祉学科 5月)
ターミナル(終末期)ケアと介護
キューブラー・ロス(Kubler-Ross Elisabeth) は、200人以上の臨死患者のインタビューを通じて、死にゆく人々がたどる心理過程を5段階の仮説として説明しています(E・キューブラー・ロス/川口正吉訳『死ぬ瞬間』読売新聞社、1978年)。この仮説は死にゆく人のさまざまな状態を理解するのに、極めて有効な考え方だと思います。死の受容は、周囲の人々の協力があれば容易に行われ、人は無限の安らぎをおぼえ、平和と威厳のうちに死ぬことができる、というロスの主張から学ぶものは多いと考えます。
私はこの本を読んで、死に行く人が自分の死を自覚していること、そのことを話しても動揺せずに話を聞いてくれる人を求めていることを知りました。それを知った時、私は看護師として過去看取った患者たちに安易な慰めや病名についてうそをついたこと、それゆえ患者の質問を恐れ、ベッドサイドから遠ざかったことについて大変申し訳ないことをしたと思いました。当時は、ガンなどの悪性疾患について患者に知らせてはならないとする考え方が主流でした。
『死ぬ瞬間』が出版された以後、ターミナルケアのあり方は大きく変化しました。現在は、医師が病名を告知し、患者に十分な説明をした上で、どの治療を選択するかの自己決定を促し、病気と闘う患者を支援してゆく方向にあります。
私は夫のターミナルケアを通して、死にゆく人ときちんと向き合うことで、死にゆく人と残される者双方が共に成長し得る機会になるということを学びました。迫り来る死を見つめつつ、「人間は死ぬために生きているわけではない。死ぬ瞬間まで生きているんだ」と語り、最後まで癌と闘い続けた夫と過ごした濃密な時間は、私と子どもたちに多くの学びと、慰めを与えてくれました。
人はこの世に生まれるときにも、死ぬときにも他者の援助を必要とします。ターミナルケアの場としては、年々病院における死が増加し、在宅における死は減少しています。平成18(2006)年4月の介護保険法の改定により、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)においても、看護師の配置と夜間における24時間連絡体制の整備など一定の要件を満たす場合に、重度化対応加算及び看取り介護加算が新設されました。これに伴い、多くの特別養護老人ホームにおいて、看取りに関する職員研修が行われ、ターミナルケアに取り組む施設が増加しつつあります。
こうした動きは、在宅のターミナルケアと同様に、長年住み慣れた場所で、共に生活してきた人に囲まれて死を迎えたいという利用者のニーズに応えたケアのあり方だといえるでしょう。
死を考えることは生の意味を問うことです。私のゼミナールでは、ターミナルケアをテーマの一つに取り上げています。将来多くの利用者の死に向き合う介護福祉士として、私たちが死にゆく人の傍らで何ができるのかを共に考えたいと思っています。
社会福祉学科 介護福祉専攻 中山 幸代
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